注文住宅は、多くの人にとって一生で一番大きな買い物です。だからこそ「失敗したくない」と感じるのは当然のことです。
注意点をまとめた記事はたくさんあります。ただ、その多くは家を売る側が書いたものです。売り手にとって都合の悪いことは、書かれにくい傾向があります。
この記事では、家を売らない立場の宅地建物取引士・ファイナンシャルプランナーが、放っておくと損が大きい順に10個を並べました。上から順に読めば、途中でやめても大切なポイントから押さえられます。
住宅ローンを「借りられる額」だけ借りると、生活が苦しくなるケースがあります。
銀行が提示する「借りられる額」(融資の上限額)は、あなたが「無理なく返せる額」ではないからです。
銀行はあなたの収入に対して、返済できる金額を綿密に計算します。返済比率や現在の借入状況、過去の滞納歴などから、銀行が損しない融資額を提示するのです。
融資の上限で借りると、生活費を圧迫したり、家電の故障時に焦ることになったりしてしまいます。無理なく返せる目安は、毎月の返済額を手取り収入の20〜25%以内に抑えることだとされています。
自分の理想を詰め込みたい誘惑に負けず、建てた後の生活が満足できるよう資金計画をしておきましょう。
プロの視点
銀行は「貸したい」立場です。提示額は“あなたが返せる額”ではなく“銀行が回収できる額”だと考えてください。営業に「これだけ借りられますよ」と言われても、判断軸はあくまで自分の手取りに置くのが安全です。
注文住宅の費用は、建物本体の価格だけでは終わりません。本体工事費は総額の7〜8割ほどで、残りの2〜3割は別にかかるからです。
残りの2〜3割は、付帯工事費(地盤改良・外構・給排水の引き込みなど)と諸費用(登記・ローン手数料・税金など)です。これらは、カタログに載っている「坪単価」には含まれていないことがほとんどです。
本体価格だけで予算を組むと、契約後に数百万円単位の追加が出て、資金が足りなくなります。
最初に「総額でいくらまで出せるか」を決め、本体価格はその7〜8割に収まるよう逆算しておきましょう。
土地の問題は、家を建てたあとでは取り返しがつきません。建物は造り直せても、土地そのものは変えられないからです。
たとえば地盤が弱ければ、数十万〜数百万円の地盤改良が必要になります。ハザードマップ上で浸水の恐れがある、希望の大きさの家が建てられない法規制がある、といったケースもあります。こうした土地のトラブルは、思っている以上に多く起きています。
売り手は土地を売りたいので、こうしたマイナス面を自分から細かく説明するとは限りません。
土地は「気に入ったから買う」の前に、地盤・ハザードマップ・建築の制限を必ず自分で確認しましょう。
依頼先は、1社だけを見て決めないことが大切です。比べる相手がいないと、その会社の価格や提案が高いのか安いのか、良いのか悪いのか判断できないからです。
同じような条件でも、会社によって数百万円の差が出ることは珍しくありません。担当者との相性も、家づくりの満足度を大きく左右します。
「相見積もりは2〜3社まで」という意見も見かけますが、これは対応の手間を減らしたい売り手側の都合でもあります。まずは複数社の提案を見比べて、相場感をつかむことが先です。
1社の営業に流される前に、複数社のカタログをまとめて取り寄せ、自分の目で比較するところから始めましょう。
契約を急がせてくる営業には、いったん立ち止まってください。冷静に比べる時間を与えないことが、相手の狙いである場合があるからです。
「今月中に契約すれば値引きします」「この条件は今だけです」といった言葉は、判断を急がせる典型的な手法です。焦って契約すると、ここまでの1〜4(お金・土地・比較)の確認を飛ばしてしまいます。
本当に良い会社であれば、こちらが納得するまで待ってくれます。
値引きやキャンペーンを理由に急がされたときほど、一度持ち帰って、家族と冷静に話す時間を取りましょう。
2026年に家を建てるなら、いまの経済状況を前提に資金計画を立てる必要があります。建築費が下がりにくく、住宅ローンの金利も上がる動きが続いているからです。
建材費や人件費の高止まりで、住宅価格はここ数年、高い水準が続いています。さらに、日銀の金融政策の転換で、長期金利は上昇傾向にあります。金利がわずかに上がるだけでも、総返済額は数十万〜数百万円単位で変わります。
「数年前の相場」や「親世代の感覚」で予算を考えると、計画がずれます。
最新の建築費と金利を前提に、返済計画を見直しておきましょう。
住宅の断熱性能は、目に見えないからと削らないことが大切です。性能の低い家は、住んでからの光熱費と快適さに長く影響するからです。
2025年4月から、すべての新築住宅で断熱等級4への適合が義務になりました。これまで努力目標だった基準が、最低ラインになったということです。さらに2030年ごろには、より高い等級5が基準になる見込みです。
つまり、最低ラインの等級4で建てた家は、数年後には「型落ち」と見られる可能性があります。光熱費だけでなく、将来売るときの資産価値にも関わる部分です。
予算が苦しいときに削りやすいのが性能ですが、後から上げるのは難しい部分です。等級4を出発点に、可能な範囲で上の性能を検討しましょう。
間取りは、図面の見た目だけで決めないようにしましょう。紙の上の図面では、実際の暮らしやすさまで想像しきれないからです。
たとえば、生活の動線(毎日の動きの流れ)、コンセントの位置や数、朝と夜の日当たり、収納の使いやすさは、図面を眺めるだけでは気づきにくい部分です。間取りの後悔は、住んでから「ここを失敗した」と気づくケースがとても多いのが実情です。
モデルハウスや完成見学会で実物を見て、可能なら同じような間取りで一日の動きを想像してみてください。
図面に「OK」を出す前に、自分たちの生活を当てはめて確認しましょう。
見積もりは、「どこまでが価格に含まれているか」を契約前に確認してください。「総額これくらい」という説明だけで契約すると、あとから追加費用が出ることがあるからです。
たとえば、食器洗い機やカップボード、カーテン、照明、外構などが「標準仕様」に入っておらず、別料金(オプション)だった、というのはよくある話です。これが積み重なると、数十万〜百万円単位で予算が膨らみます。
見積書のどこまでが「込み」で、どこからが「別」なのかは、聞かなければわからないことが多いです。
契約前に「この金額に含まれていないものは何ですか」と、必ず確認しておきましょう。
家づくりは、建物の費用だけでなく、完成までの段取りと費用も見込んでおきましょう。注文住宅は契約から入居まで時間がかかり、その間にもお金が動くからです。
土地探しから入居まで、一般的に1年前後かかることも珍しくありません。いま賃貸に住んでいる場合は、その間の家賃と新居の費用が重なる時期も出てきます。建て替えなら、仮住まいの費用や引っ越し代も必要です。
こうした「建物以外の出費」は見落とされがちで、後から家計を圧迫します。
スケジュールと、その間にかかるお金も、あらかじめ計画に入れておきましょう。
注文住宅の注意点を、損の大きい順に10個見てきました。すべてを完璧にこなす必要はありません。ただ、上位の「お金(1・2)」「土地(3)」「会社選び(4)」だけは、外さないようにしてください。
この3つに共通するのは、「最初に・自分で・複数を比べて確認する」ことの大切さです。
特に会社選びは、1社の話だけを聞いて決めると、価格も提案も比べようがありません。中立に比べるための第一歩として、複数社のカタログをまとめて取り寄せ、自分の目で見比べるところから始めるのがおすすめです。